【マーケティング事例】
400以上のコミュニケーションパターンから生み出した中長期的なコミュニケーション戦略とは?

生活者の消費行動が多様化し続ける中で、中長期的に選ばれるブランドを創るには継続的に市場で優位なポジションを確立する必要があります。今回は、生活者の状態やタッチポイントに合わせて400パターン以上のコミュニケーション開発を行いながら、中長期的なブランドの成功パターンを生み出した戦略立案法について紹介します。
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Date2019年12月02日
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CategoryCase
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Tag#Planning & Execution#カスタマー エクスペリエンス#タッチポイント#データドリブン#マーケティング
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課題
生活者の購買行動の変化に対応した顧客中心のマーケティング体制構築の必要性
スマートフォンが台頭するなか、ブランドから生活者までのタッチポイント全体を見渡しながらパソコンユーザー市場そのものを創造し続ける必要がありますが、小売店舗という既存チャネルが強力な分、ECへシフトしつつあるユーザー行動への目配りも充分とはいえません。あらゆる生活者が顧客になりうるターゲットの幅広さ背景となり、最適なカスタマーエクスペリエンスの源泉である(注1)STPもあいまいな部分がありました。既存市場を着実に獲得したその先で、ブランドが生活者の日常に浸透し使われ続けるため、そしてチャネルとともに成長を続けるために、購買行動の変化とROIを考慮した顧客中心マーケティング戦略への転換が求められていました。
(注1)STP:セグメンテーション(市場細分化)、ターゲティング(標的市場の決定)、ポジショニング(自社の立ち位置の明確化)の3つの頭文字をとった分析法のこと
提案
私たちVENECTは、STPという原点に立ち返ったマーケティング戦略の再考、チャネルパートナーシップ強化による中長期の市場創造と顕在市場獲得の効率化を両立するマーケティング体制の構築。そしてカスタマーエクスペリエンス最適化へ向けた具体的なデジタルコミュニケーションプランを提案しました。
STPからの原点回帰でホームポジション固め
長らくソフトウェア市場をリードしてきたクライアントの課題は、市場変化に気づきづらい体質にあると私たちは考えました。店舗で待っていればパソコンとともにソフトウェアが売れていく成功体験を一度リセットすること、すなわち能動的にターゲット像を模索し、顧客行動というデータをドライバーとして変化する市場と向かい合い続ける体制への転換が、最初の提案でした。全てのチャネルを通じた一貫性あるブランド体験が不可欠と考えた私たちの提案をふまえて、生活者とのタッチポイントを司る小売店にも、組織の垣根、オフラインとオンラインの垣根を超え、プロジェクトへ参加してもらうことになりました。
私たちとクライアント、チャネルパートナーは、中長期の持続的エンゲージメントという終わりのないマーケティング活動における優先順位を共有するため、あらためて「ターゲットとは誰か」を見つめ直す原点からプロジェクトをスタートしました。ほぼすべての生活者がターゲットになりうるプロダクトだけに、立ち帰るべきホームポジションが不明瞭だと、施策もブランドメッセージも、また成果の捉え方も拡散しがちです。STP再定義とともに、日常的なブランド認知向上、そして生活者にとって最適なタイミング、かつスムーズな購買体験といった、プロジェクトにおけるデジタルマーケティングの基本方針もしたためました。
基本方針をふまえ、VENECTメソッドで生活者がパソコンやソフトウェアに求める価値をセグメントごとに細分化。各セグメントが時間や場所を問わずブランド価値を体験し、スムーズな購買行動を起こせるように、タッチポイントとタッチポイントごとのコミュニケーションプランを設計しました。
各セグメントの認識変化・態度変容を理解した上で、コンバージョン効率を鑑みターゲットの課題解決の優先順位をつけました。さらには、ターゲットの認識変化を促すため知覚刺激のパーセプションフロー・モデル(一部)を構築しました。
400超のパターンからコンシューマードリブンで最適解を模索
多様なターゲットに対する様々なタッチポイントを通じたコミュニケーションプランに、「正解」「王道」はありません。そこで私たちが提案したのは、市場の声を訊きながら、機動的かつ効率的に、そして段階的に購買率を高めていく、PDCA型のデジタルマーケティングサイクルです。ドライブの源は、セグメント別に設計したタッチポイントごとの生活者行動データ。細分化したセグメントの認識が変化する毎に、AIをはじめとするテクノロジーを駆使してクリエイティブ✕コピー✕UI✕媒体を自在に組み合わせ、400以上のコミュニケーションパターンをテストしながら、最適解を模索していく手法です。クライアントにもチャネルパートナーにも一定の負荷がかかる提案でしたが、デジタルマーケティング基本方針というホームポジションをあらかじめ共有できていたため、私たちVENECTとともに学びを重ねていく判断に迷いはなかったといいます。
セグメントとチャネルごとに、訴求ポイントや「厳選」と「おすすめ」、「最新」と「売れ筋」といったキーワードの使い分け、そもそもテキストコピーは必要か、パソコン本体あるいは利用シーンといったキービジュアル、プロダクトページや購買ページヘの誘導UIなど、検討、検証しそして改善可能な要素は無数に考えられます。私たちとクライアント、チャネルパートナーは、春、夏、冬とターゲットごと、タッチポイントごとにこれら無数の組み合わせでターゲットに語りかけながら最適解に近づく努力を重ね、振り返り、学びを次の施策へ反映し続けています。
成果
デジタルチャネル全体を通じた潜在市場の発掘と見込み客化のプロセスを強化したソフトウェアブランドは、ユーザー予備群とのタッチポイントを大幅に増やすことができました。精緻なパターンテストを繰り返し、ターゲットの心に響くコミュニケーションのありかたを模索してきた結果、ROIも改善し、ブランドとチャネルパートナーの両者が、計画を上回る実績を記録しました。
過去、現在、各態度変容における施策とその結果、そして未来におけるそれらの意味を共有する定期レポートは、ハイライトだけでなくCPA割高、CTR低下といったローライトの振り返りがポイントです。容易に変化してはならないホームポジションと、変化すべき戦術や施策をスタート時に切り分けたため、ハイライトとローライトに基づくツール取捨選択も大幅に効率化しました。
また、 中長期顧客中心マーケティング戦略の軸では、ひとつひとつの施策に対する市場の反応というリアルなデータ、そしてデータに基づく過去・現在・未来を共有することによって、ブランドとチャネルパートナー、そしてVENECTは、常に一丸となって市場とのコミュニケーションに集中しています。AIを駆使した広告配信の採用をはじめ、過去脈々と築いてきた成功体験にとらわれない施策も早々に効果をあげました。「いま最善」のクリエイティブやチャネルがどんなに変化を続けても、「ターゲットは誰か」という原点とPDCAデジタルマーケティングにおいてブレることのないソフトウェアブランドは、市場のスピードに負けない変革体質を身につけようとしています。