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プロジェクト人数に左右されることなく、 目的を達成するためのプロジェクトマネジメントとは

一般的に、一つのプロジェクトに関わる人数が増えるとコミュニケーションコストが増大し、生産性が低下すると言われてきました。
それは、本当に正しいのでしょうか? 私たちは、あらゆる立場の関係者と適切なコミュニケーションを取ることで、人数に左右されないプロジェクトマネジメントを実施できると考えています。今回は同じ考えを持つVENECTとCOPILOTのメンバーが集まり、実際にどのようなプロジェクトマネジメントを行っているのか、事例を交えてお話しました。

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メンバーが増えても、コミュニケーションコストは変わらない

■COPILOT:定金 基氏(共同創業者)/船橋 友久氏(プロジェクトマネージャー) ■VENECT:大脇 香菜(代表取締役 / CEO)/中村 彩子(ディレクター)

大脇 香菜(以下、大脇) : 当社とCOPILOTは「プロジェクトメンバーの増減はコミュニケーションコストに影響を与えない」という共通の考えを持っています。その根拠となっているのが、“Who knows what”——すなわち、誰にどの情報を共有すれば問題が解決されるかを意識する、いわゆるトランザクティブ・メモリーの考え方ですね。(※1)
定金 基氏(以下、定金) : そうですね。誰か特定の人がハブになってプロジェクトを進めてしまうと、人数が増えれば増えるほどコミュニケーションが大変になるのは確かです。そうではなく情報共有の仕方を変えて、小さなチームが自律的に動ける体制を作った方が生産的じゃないか、と。COPILOTでは、アジャイルソフトウェア開発の手法であるスクラム(※2)や、「ティール組織(※3)」に代表される自律分散的な組織論、「ホラクラシー(※4)」などの方法論からヒントを得て、プロジェクトにおけるコミュニケーション方法を導き出しています。
大脇 : 私たちもエージェンシーの立場でさまざまなプロジェクトに携わる中、同様の課題意識を持っていました。
VENECTは少数精鋭のチームで業務に取り組みますが、会社として担う事業領域はかなり広範囲にわたります。そのため特定の人ひとりの力だけで、プロジェクトを完遂することは困難です。そもそもクライアントの立場から見れば、最も重要なことは「課題の解決」であって、「誰が解決してくれるか」は大きな問題ではないんですよね。
プロジェクトに関わる人数に左右されずに、課題解決を目指す。そのためにまず、必要なのが“Who knows what(誰が何を知っているのか)”を明確にすることだと考えています。

※1:トランザクティブ・メモリー(Transactive Memory)
アメリカの社会心理学者であるダニエル・ウェグナーが、1980年代半に提唱。組織にいる全員が同じ情報を知ることではなく、「誰が何を知っているか」を「組織全員が知っている」状態が重要であるとする考え方。
※2:スクラム(Scrum)
アジャイル開発手法の一つ。固定された一定の期間ごとにアウトプットへの評価を繰り返し、チームが密な連携をすることで柔軟なプロダクトの開発を可能にする。
※3:ティール組織(Reinventing Organizations)
トップダウンではなく、社員一人ひとりが自律的に意思決定を行うことで進化する組織。2010年代半ば以降に「次世代型組織論」として注目を集めた。
※4:ホラクラシー(Holacracy)
自律的なグループに決定権を分散させることで、それぞれのグループが能動的に活動できるようになる組織管理システムのこと

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Issue List作成からはじまる、理想のプロジェクト構成

大脇 : ここからは、実際に両社で行ったプロジェクト事例をもとに、理想のプロジェクト構成について話していきましょう。
“Who knows what”の可視化をはじめとし、COPILOTさんが提唱されている「Project Sprint」(※5)を軸として、具体的にはどのような動きをしていったのか。プロジェクトを担当した船橋さんと中村さん、説明してもらえますか?
※5:「Project Sprint」
多様性のあるメンバーによる部門/組織横断のチームが、不確実性の高い環境・状況で、複雑なアウトプットを行うことを可能にするプロジェクト推進メソッド。2020年4月にCOPILOT社がオープンソースとして発表。
https://projectsprint.org/

中村 彩子(以下、中村) : このプロジェクトのマーケティング支援は、クライアントやパートナー、その他の外部関係者まで全員含めると、最大50人ほどの規模となるプロジェクトでした。私たちが最初に着手したのは、「Issue List」と呼んでいるプロジェクト管理シートの作成です。
船橋 友久氏(以下、船橋) : リストといっても単に課題やタスクを洗い出すのではなく、プロジェクトメンバーの誰がどんな情報を持っているのか、どんなコミュニケーションの取り方をしているのか、誰がどんな作業環境で仕事をしているのかなど、全体の状況を可視化することからはじめます。これは、今回のプロジェクトに限らずどの仕事でも共通することですね。
中村 : Issue Listによって「誰が何を知っているのか」を全員で共有することができるようになるんですよね。私たちはこのリストとマーケティング施策のマイルストーンに沿って、誰といつまでに、どのようなコミュニケーションを取っていけばいいかを把握していきました。
船橋 : このプロジェクトには50人の関係者がいましたが、Issue Listで全体を把握してみると、常時連絡を取り合う必要がある人は5-6人ほどに限られました。プロジェクトメンバーの中で、誰がどの情報を持っているのか。また、誰がどんな作業環境で仕事しているのかさえわかれば、関わる人数によってプロジェクトの進行が左右されることは少なくなります。

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定期的な「振り返り」が、チームのケアにもつながる

定金 : 「誰が何を知っているのか」を可視化した後は、必ず定期的な振り返りを実施することが重要です。プロジェクトを進めていくうえで、情報の交流は欠かせません。
いま誰がどんな役割を担っているか、誰に対してどのような期待が向けられているか——そうした確認を含め、定例ミーティングを軸としたコミュニケーションを行うことを、私たちは強く推奨しています。

中村 : 各自の役割や期待値などを含めた“状態”を、都度すり合わせられるのは大きいですよね。VENECTが「Project Sprint」の考え方を取り入れてから、対クライアントだけではなく、メンバーのケアもしやすくなったと思います。
大脇 : 確かに、それは私も感じていました。定期的に関係者の状態、状況が把握できるからこそ、それぞれのメンバーがただ前だけ見てがむしゃらに走るのではなく、自然と横の人にも視線が向けられる。
モチベーションが下がっている、目の前のタスクに集中しすぎて周りが見えなくなっている、人の言葉にセンシティブになっている……Issue Listに記載されない人間的要素も、フォローすることができるようになりましたね。
船橋 : それも、プロジェクトマネジメントにおいて大事なリスク管理の一つだと思っています。プロジェクトの進行を妨げる要因を見つけて、それを回避するために適切なコミュニケーション手段を選ぶ、という。
中村 : プロジェクトチームの中でも、あえて違う会社のメンバーから進言してもらう、忙しそうな人と連絡を取るときの言葉遣いに気をつける、不安にさせてしまいそうなことは何度もフォローするなど、私自身もいろいろと配慮するきっかけになりました。
定金 : そうしたメンバーの気持ちや状態も含め、定例ミーティングで浮かび上がった認識の相違点や課題感のズレなどをもとに、次のミーティングのアジェンダを変え、再びIssue Listを更新する。私たちは、それがプロジェクトマネジメントの基本だと考えています。

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明日から、自分のプロジェクトで実践できることは?

大脇 : おそらく多くの方が、プロジェクトの進行方法について少なからず悩みを抱えているのではないかと思います。最後にそれぞれ、まずはどこから一歩を踏み出せばいいか、ポイントをお伝えしていきましょう。
船橋 : まずは身の回りのことからでも良いので、業務内容の可視化やメンバーへの期待値の設定をしてみてほしいと思います(※6)。それを関係者に伝え、定着させていく。この「可視化」「伝達」「定着」を繰り返して問題を改善していくうちに、状況変化に耐えられるチームの業務習慣が形作られていくはずです。
中村 : そうしたコミュニケーションを恐れないことも重要ですよね。プロジェクトメンバー間で認識の齟齬が生じたり、意見がぶつかったりすることもありますが、コミュニケーション量を増やすことで取得できる情報が増え、結果的にプロジェクトの進行を円滑にしてくれると思います。

※6:業務内容の可視化やメンバーへの期待値の設定
より良いチームの状態を目指すには、チームメンバーの持つ互いの役割についての期待値が揃っているかどうか、確認する必要がある。
詳細はこちら:https://projectsprint.org/ja/code/tutorial/section4-3.html

定金 : そもそものところではありますが、「このプロジェクトで何を目指すのか?」というビジョンを明確にして、定例ミーティングで毎回確認するプロセスを大事にすると良いのではないでしょうか。
ビジョンが提示されてはじめて、メンバーが現状とのギャップや違和感を察知できるようになり、それを解消するためのコミュニケーションが生まれます。それが何よりも、より良いチームを作るためのドライバーになりますから。
大脇 : みなさん、ありがとうございます。他者と、それも複数の人たちとの間に共通認識を作っていくことは、思っている以上にハードルの高いことです。それぞれ生き方も違えば、バックグラウンドも異なる。そんな人たちが集い、一つのプロジェクトに取り組むわけですから、丁寧なコミュニケーションを重ねていかなければものごとは前に進みません。
まずは関係者の人数に関わらず、メンバー間で “Who knows what(誰が何を知っているのか)” を意識するところからはじめてみてほしいですね。