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ターゲットニーズの理解とコミュニケーション設計とは?

この記事でわかること
  • データドリブンマーケティングに必要なコミュニケーション設計
  • STPを軸にしたコミュニケーション事例

読了目安:7分

多くの購買チャネルや情報収集をするためのチャネルが存在する現代、既存市場の範囲を超えた競合関係を生み、商品の機能や品質の均質化(コモディティ化)を招いています。 さらなる変化が続く市場で、ブランドの価値を届けていくためには、企業が一方通行で単一的な情報提供をするのではなく、顧客の心理に訴えかけ、顧客を動かすコミュニケーションが必要不可欠となっております。今回は、顧客のインサイトを理解し、コミュニケーション設計につなげる方法について紹介していきます。

目次

カスタマージャーニーだけの管理では不十分?

タッチポイントの管理を「線」でつなぎ、再現性をもたせたのがカスタマージャーニーによる購入プロセスと施策の管理です。カスタマージャーニーにより、クリエイティブ制作やプロモーションといった施策の再現性を高め、各施策の目的や背景、そして結果までが社内の部署間で共有することが可能になりました。

しかし、カスタマージャーニーによるコミュニケーション管理だけでは、購買行動軸で考えたクリエイティブ開発の意味合いが強く、未来の新市場で生き残るためのデータドリブンマーケティングには十分に対応できないことが顕在化しています。

インサイト理解から始まる顧客目線でのコミュニケーション設計

今後さらに、顧客が置かれている状況を理解し、ブランドから得られる価値や顧客が動かされる隠れた心理(インサイト)にブランドが訴えかけていくコミュニケーションが求められます。

現代に求められるコミュニケーションは、プロモーション(Promotion)や流通の現場(Place)だけの管理では足らず、4Pすべてを通じて考えていく必要があります。これを実現するためにはソーシャルリスニングを活用した顧客理解と、顧客が考える商品の本当の価値を把握し、ブランドストーリーを形成していくことが重要となってきます。

ソーシャルリスニングを活用した、顧客理解とブランドストーリーづくりの例としては、大手宅配便による「置き配」の訴求例があげられます。ひと昔前の常識だと、盗難、紛失の観点からNGとされるような「置き配」の内容を、大手宅配がサービス化したコミュニケーションです。荷受け役に起用されたタレントが、丁寧に『置き配』する配達スタッフの振る舞いに感心する様子を中心に、リブランディングに結びつけるクリエイティブを開発しています。

サービス提供の企業スタンスを「自分ごと」と、とらえてもらえる共感の表現でブランドストーリー化したわかりやすい例といえましょう。

また、清潔な環境づくりへの貢献を謳う大手消費財メーカーの手洗い石鹸液の事例もあります。この大手消費財メーカーは、新米ママの時点で自社の手洗い石鹸ブランドの認知を高めることができれば、その後新米ママを卒業した後も、ファンで居続けてくれる可能性は高く、年数とともにファンが拡大することにつながると考え、子育てママへ「子どもの液体石鹸での手洗いイベント」を実施しています。

イベントを通じて、新米ママからの共感を得られるブランドコミュニケーションを行うことで「自分ごと化」しやすくなり、自分自身での利用へのハードルも低くしようとするこのアプローチも、顧客本人は気づくことのない(心理を明示できない)インサイトに訴求した好例といえます。

長期的なビジネス成長にもコミットできるコミュニケーション設計

顧客のインサイトを理解した上で、ターゲットが「自分ごと化」できるコミュニケーション設計を行うことで、ブランドスイッチを防ぎ、継続的なブランドファンの創出、そして長期的な企業のビジネス成長につながるマーケティング施策の展開が実現します。

長期目線でのマーケティング施策とはつまり、ターゲットに設定した顧客の状況が変化してもブランドが利用されるようにブランドの利用シーンの多様化を意識したり、自社内に複数ブランドがあるなら、自社内他ブランドへの波及効果なども意識したコミュニケーション設計を行うことです。こういったコミュニケーション設計を行うことで、ようやく競合との差別化を獲得できるほど、競合環境は厳しいものになっています。

そのために重要なのは、STP(市場セグメント、ターゲティング、ポジショニング)のフレームワークの社内共有で、そして既存市場を超えた将来市場への波及効果目的も共有し、「点」から「線」への施策管理、ひいては年度や次元を超えたタッチポイントの管理運用が実現されます。STPの中でも、特に、そのターゲットの成長に基づき形成される想定市場セグメント選定が重要となると考えられます。

STPを軸にしたコミュニケーション事例

VENECTが大手飲料メーカー様に提案したプロモーション動画の事例を用いて説明します。

飲料カテゴリの多様化で、市場シェアの伸び悩み(他ブランドへのスイッチ)傾向が続く中、VENECTでは絞り込んだターゲットの成長を見据えた時間軸も含めたコミュニケーション設計で、当該企業の他ブランドへの波及効果も含めた提案をしました。

具体的には、商品のターゲットを「ママ層」といった非常に狭い層に絞り込み、そのターゲットからの共感を獲得できるブランドストーリーを提示するものです。

ママ層の共感を創出するために、動画はターゲット自身の経験と投影する(経験回想)シーンで、頑張っているママ層へのエールを送ります。「わかる~」「そうそう」「わかってくれてますね」などのメッセージで象徴されるブランドの哲学への共感を獲得する動画表現です。また「機能的価値」の訴求では、「健康や安全への不安を払拭」という価値を印象付け、将来そのユーザーが子育てステージにはいった場合にも、自分の子ども向けの飲料として選択される確率を高めるためのコミュニケーション設計です。

この「お客様起点のマーケティング」のアプローチは、まず動画で共感を持ってもらった後に「子世代における飲用が可能である認識」や「情緒的感情」を現実のブランドとのタッチポイントで体験してもらい、ブランドポジションを明確化、ロイヤリティー向上。また、将来的には、コンテンツマーケティングにまでつなげるプラットフォームを構築し、ファンコミュニティー化までをも狙う長期的戦略の提案でした。

この動画からはじまるアプローチの特徴は、絞り込んだターゲットとのタッチポイント設計において

(1)ターゲットである「ママ層」自身の需要及び、子ども向け飲料としての需要も喚起
(2)当該メーカー内他ブランドを含めた、全体の持続的収益確保を目指す

といった、長期的かつ新市場への視点も併せ持つ基本スタンスに立った提案であるということです。

現状の競合関係でのシェア争奪のためでなく、非常に狭いターゲットに絞りこんだ上でこそ実現可能な共感獲得の表現を入り口に、セグメント市場の継続的な循環を考えた「長期持続可能な需要やブランディング」や「自社内他ブランドへの波及を考えたコミュニケーション」などが展開され、差別化に結びつけるといった方策を立てました。

最後に

これまで見てきたように、ターゲットのニーズ理解とタッチポイント設計は、

(1)絞り込まれたターゲットそれぞれに
(2)特有の共感アプローチを入り口に
(3)顧客インサイト把握のもと
(4)4Pの総力戦で
(5)ブランドの新しい価値(新セグメント市場)の提案で差別化する

などといった高次元化・多様化の途を歩み始めております。

そこまでしなければ「そのブランド選択」の理由につながらない時代なのです。個別施策の担当者は、決して「点」での管理や属人的な施策に陥らぬよう、広角的かつ長期的視点に立った目的共有のもと、ニーズの把握とタッチポイント管理を進めていくことが肝要となってきます。

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