MMMは、複数のマーケティング施策が売上にどのように影響したのかを、全体のデータから整理して読み解く分析手法です。特に、Cookie規制やプライバシー保護の流れによって、個人単位のトラッキングが難しくなる今、再評価が進んでいます。この記事では、MMMの基本的な考え方から、どのように活用できるのかを解説します。
MMMとは?
MMMは、Marketing Mix Modelingの略称で、マーケティング投資の効果を測定・最適化するための統計的手法です。様々なマーケティング施策が売上にどれだけ貢献しているかを定量的に分析し、予算配分の意思決定に役立てることができます。たとえば、ある企業が今期に以下のような施策を実施したとします。
- テレビCM:3,000万円
- デジタル広告:2,000万円
- SNSキャンペーン:1,000万円
結果、売上は前年比120%増加
このとき知りたいのは、単なる「売上が伸びた」という事実だけではありません。MMMは、下記のような問いに答えるための分析アプローチです。
- 売上増加に最も寄与した施策はどれか
- それぞれの施策はどれくらい効いていたのか
- 季節要因や天候、競合の動きなどは影響していないか
- 次回はどのチャネルにどれだけ投資すべきか
なぜ今、MMMが注目されているのか?
MMMが今注目されている背景には、デジタルマーケティングを取り巻く環境変化があります。近年は、サードパーティCookie規制の強化、GDPRやCCPAなどのプライバシー関連法規制、トラッキング拒否設定の一般化などにより、個人ベースでユーザー行動を追いかける計測が難しくなってきました。
これまでのデジタル広告では、ユーザー単位の計測によって成果を見に行く方法が主流でした。 しかし今後は、それだけに頼るのではなく、集計データを使って全体最適を考える視点がより重要になります。MMMは、個人データに依存せず、広告費や売上、季節要因などの集計データから効果を分析できるため、こうした時代に合った手法として注目されています。
MMMで解決できる3つのこと
MMMの価値は、大きく3つに整理できます。
1. 複数施策の効果を分けて見られる
マーケティング施策は、たいてい単独では行わず、テレビCMを流しながらWeb広告やSNS施策、店頭キャンペーンを実施するなど、複数施策を同時に行うことが多いです。そのため、「売上が上がったのはこの施策のおかげ」と単純に結論を出すことはできません。MMMを使うことで、複数の施策が同時に走っている状態でも、それぞれの貢献を整理して捉えることができます。
2. 売上の背景にある要因をより立体的に把握できる
売上は広告だけでは決まりません。
- 季節性
- 天候
- 祝日
- 価格改定
- 競合の出稿量
- 店舗の販促施策
など、さまざまな要素が絡み合っています。
MMMでは、こうした広告以外の外部要因も含めて売上を分析するため、施策効果をより現実に即した形で見ることができます。
3. 予算配分のシミュレーションに使える
MMMの大きな魅力のひとつが、次の予算配分の意思決定に使えることです。たとえば、
- テレビCMの予算を少し減らしてデジタルに回したらどうなるか
- SNS施策を増やした場合、どの程度の売上インパクトが見込めるか
といった形で、複数の予算配分パターンを比較しながら検討することができます。「何が効いたか」を振り返るだけでなく、「次にどう投資するべきか」を考える材料になるのがMMMです。
MMMの役割
MMMは統計モデルを使って、この複雑なデータから各要因の影響を「分解」します。イメージとしては、売上という母数を「テレビCMの貢献:30%」「SNSの貢献:20%」「店頭プロモーション:15%」「気温効果:10%」「その他:25%」というように切り分ける作業です。具体的には以下のような統計的手法を用います。
- 回帰分析:複数の要因と売上の関係をモデル化
- 時系列分析:季節性やトレンドを考慮
- ベイズ統計:事前知識を組み込み、より柔軟な推定を実現
統計の基本的な考え方は、部分から全体を推定することです。視聴率調査を例に考えてみましょう。全国すべての世帯を調べるのは不可能なので、ランダムに選んだ数千世帯を調査し、そこから全国の視聴率を推定します。この時、「調査した世帯のデータがどのようなばらつきを持っているか」を表現するのが確率分布です。
MMMでも同様に、観測したデータ(過去のマーケティング投資と売上)から、未観測の関係性(各施策の真の効果)を推定します。ベイズ統計では、事前知識と観測データを組み合わせて、最も確からしい効果を確率分布として表現します。
MMM分析の流れ
MMMのプロジェクトは、一般的に次のような流れで進みます。
1. データを集める
まずは分析に必要なデータを整理します。主な対象は以下のようなものです。
- マーケティング投資データ(チャネル別の広告費、露出量など)
- 売上データ(日次・週次の販売実績)
- 外部要因データ(天候、祝日、競合動向など)
2. モデル構築
次に、統計モデルを使用し、各要因と売上の関係を数式化します。
3. 効果推定
モデルから各チャネルの貢献度を算出します。
(例)ある企業の分析結果
・テレビCM:売上の25%に貢献(投資額3,000万円)
・デジタル広告:売上の18%に貢献(投資額2,000万円)
・SNS:売上の12%に貢献(投資額1,000万円)
・ベースライン(施策なしでも売れる分):売上の45%
4. 予算最適化のシミュレーション
「もしテレビCMを2500万円に減らし、デジタル広告を2500万円に増やしたら?」といったシナリオをシミュレーションし、最適な予算配分を探ります。どの配分が最も効率的かを比較し分析していきます。
MMMの実施ツール
VENECTでは、Google社が提供している「Meridian(メリディアン)」というオープンソースのツールを利用してMMM分析を行っています。Meridianが持つ特徴としては下記の通りです。
Meridianの特徴
・最新のベイズ統計手法を実装
・メディアの飽和効果や持続効果を考慮した高度なモデリング
・オープンソースで無料利用可能
最後に
MMMを活用することで、データに基づいたマーケティングへの投資が可能になります。限られた予算で最大限の効果を追求するために、是非本記事をお役立ていただければ幸いです。
VENECTでは、ビジネスゴールに対して必要な成果がでているのか、またその背景にはどのような要因が考えられるのか、定量・定性の情報をもとに戦略立案から実行まで一気通貫でご支援しております。MMM分析や、データに基づいたマーケティング活動について課題やお悩みがあれば、お気軽に下記フォームからお問い合わせください。
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