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ジョブ理論の概要や実例、
活用に向けた3つのステップを解説

この記事でわかること
  • ジョブ理論の概要
  • ジョブの意味
  • ジョブとニーズの違い
  • ジョブ理論が注目されている背景
  • ジョブ理論の実例
  • ジョブ理論活用の3つのステップ

読了目安:7分

マーケティングにおいて、顧客の表面的なニーズではなく本質的な目的を見極める手法として有効なのが「ジョブ理論」です。顧客が本当に求めているものにフォーカスすることで、既存の商品に囚われないイノベーションが可能になります。

目次

ジョブ理論とは

ジョブ理論について、まずは以下の3点で解説します。

  • ジョブ理論の概要
  • ジョブとは何か
  • ニーズとの違い

順番に見ていきましょう。

ジョブ理論の概要

ジョブ理論は、商品やサービスを利用することで顧客が達成したい本当の目的を洗い出すためのメカニズムです。著書「イノベーションのジレンマ」で有名なアメリカの経営学者クレイトン・クリステンセン教授によって提唱されました。表面的なニーズに惑わされず、顧客の本質的な目的を見極めることがイノベーションには重要だとされており、その手法としてジョブ理論が注目されているのです。

ジョブとは何か

ジョブ理論における「ジョブ」とは、「顧客が達成したい本来の目的」を指します。そして、ジョブを達成するために商品・サービスを「雇用」することで、自身はジョブから「解雇」されるといったように、「ジョブ・雇用・解雇」という独自の言葉で顧客の行動を表現するのが特徴です。

日本では1つの企業に長く勤めるのが一般的ですが、アメリカの企業は仕事内容に応じてスキルのある人材を都度雇用します。ジョブ理論は、アメリカ式の雇用形態に基づいて生み出されたモデルだといえるでしょう。ジョブは、機能的ジョブ・社会的ジョブ・感情的ジョブの3つに分けられます。

機能的ジョブは、商品やサービスの機能によって成し遂げられるものです。例えば、ミネラルウォーターなら「喉をうるおす」「水分を補給する」といった目的が挙げられます。

社会的ジョブは、「周囲からこう見られたい」という願望に基づくものです。例えば、カフェを「おしゃれな人と思われたい」という動機で利用する場合が挙げられます。

感情的ジョブは、特定の感情を抱くことが目的です。例えば、コーヒーなら「リフレッシュしたい」「心を落ち着かせたい」といった目的が挙げられます。

ニーズとの違い

マーケティングでは、消費者が求めているものを指す言葉として一般的に「ニーズ」という用語が使われます。ジョブとニーズは似ていますが、ジョブのほうがより潜在的な目的を指すケースが多いといえるでしょう。例えば、スポーツジムに通いたい人であれば、ニーズは「近所にジムがあってほしい」「料金の安いジムに通いたい」などが挙げられます。一方、ジョブは「痩せたい」「周囲からスタイルがよいと思われたい」など、より本質的な目的を指します。ただし、ジョブはニーズの一部であることも多いため、明確に分けられるわけではありません。ジョブという用語を使う場合は、より潜在的・本質的な目的を指すと認識しておきましょう。

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ジョブ理論が注目されている背景

ジョブ理論が近年注目されているのは、企業が成長していくための「イノベーション」の創出に効果的だとされているからです。現代の先進国では人々の基本的な需要は満たされており、ニーズの多様化が進んでいます。既存の商品・サービスの改善や顧客へのヒアリングからは、新たなアイデアが生まれにくくなっているのです。そこで、ユーザーが求めるより本質的な価値に注目することで「本当に得たい利益は何か」を追求し、イノベーションにつなげる「ジョブ理論」が注目されるようになりました。

ジョブ理論の実例

ジョブ理論の実例としてよく挙げられるのが、ファストフード店でのミルクシェイクの販売拡大に関するエピソードです。当初はアンケート調査の結果をもとに、フレーバーやトッピングを工夫する施策に取り組んだものの、思うような成果が得られませんでした。そこで実際にミルクシェイクを購入した人を観察し、本当の購入目的を探ります。すると、「退屈しのぎ」という「用事=ジョブ」を片づけるためにミルクシェイクを「雇用」しているという状況が見えてきました。さらに、退屈しのぎといっても以下のようにさまざまな状況が浮かび上がりました。

  • 車での通勤中にミルクシェイクを飲んでいる
  • ミルクシェイクは運転中の退屈さを解消してくれる
  • バナナではすぐなくなってしまい、解決策にならなかった
  • ドーナツは手が汚れるため、運転中には食べたくない
  • ミルクシェイクなら手が汚れず、長く楽しめる

これらの状況を踏まえ、「より長持ちするよう、ボリュームを増やしたミルクシェイク」を開発したところ、売上拡大につながったのです。表面的なニーズに惑わされず、本来の目的(=ジョブ)を追求したことが成功につながった事例だといえるでしょう。

ジョブ理論活用の3つのステップ

ジョブ理論を実際のマーケティングで活用する際は、以下3つのステップで取り組みましょう。

  1. 酷悪はなぜそれを購入するのか理由を考える
  2. 完了すべきジョブは自社商品によって解決できるか考える
  3. ジョブの完了に貢献する方法を探す

順番に解説します。

顧客はなぜそれを購入するのか理由を考える

まず、顧客はなぜその商品やサービスを購入するのか、購入することでどのような利益を得たいのかを理解することが大切です。表面的な購買行動を観察するだけでなく、顧客が達成したい本当のジョブを見極める必要があります。1人1人の顧客にヒアリングする必要がありますが、実施には大きな手間がかかるため、オンライン調査によって効率化するといった工夫が求められます。

VENECTではインターネットを使ったブランド認知度調査やソーシャルリスニングの提供が可能です。ご興味のある方は、ページ下のお問い合わせフォームよりご連絡ください。

完了すべきジョブは自社商品によって解決できるか考える

顧客が「なぜ商品やサービスを購入するのか」を突き詰めることで、完了すべきジョブが見えてきます。次のステップは、自社商品によってそのジョブを解決できるかどうか検討することです。先ほど紹介したミルクシェイクの例では、フレーバーやトッピングの拡充では売上拡大につながりませんでした。「手持無沙汰を解消する」「手を汚さずに消費する」といったジョブを完了するための解決策にならなかったからです。完了すべきジョブに対して自社商品が解決策になっているか、まずは見極めることが大切です。

ジョブの完了に貢献する方法を探す

最後に、顧客が抱える悩みに対して自社商品をどうマッチさせられるかを検討します。顧客が商品を購入する本質的な理由をもとに、現在の商品設計・訴求方法でジョブの解決策になっているのか、不十分な場合はどのように改良すればジョブの完了に貢献できるかを探ります。先ほどの例では、ミルクシェイクのフレーバーやトッピングを追加すれば見栄えはよくなりますが、本質的に求められているのは「手が汚れず、長持ちする」というポイントでした。顧客がより満足度高くジョブを完了できるよう、商品・マーケティング施策を見直すことが大切です。

最後に

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