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マーケティングの効果を高める為のデータ活用とは
データ基盤構築を推進する重要なポイント(前編)

この記事でわかること
  • 日本企業のデータ活用の現状
  • データ活用を推進するための重要なポイント

読了目安:12分

目次

対談の概要

左から前株式会社primeNumberソリューション本部ソリューションアーキテクト・現株式会社Rounda CEO:岩田 匠(以下、岩田)
株式会社primeNumberソリューション本部プロジェクトマネージャー:鈴木 大介(以下、鈴木)
ヴェネクト株式会社テクニカルディレクター:加藤 智司(以下、加藤)

データ活用への関心は高まり続けており、マーケティング活動においても、データを取り入れる企業が急速に増えています。しかし同時に、 活かしきれていない、利活用していきたいと思っているが方法が分からない、などの悩みも増えています。

今回は「あらゆるデータを、ビジネスの力に変える」をビジョンに掲げる株式会社primeNumberからプロジェクトマネージャーの鈴木氏と、primeNumberから独立し株式会社Roundaを立ち上げた岩田氏 をお招きし、VENECTの加藤を交え、マーケティングにおけるデータの利活用とは何か、またどう活用すべきなのか、現状の日本企業が抱える課題から、実際にクライアントへ提案している解決方法についてをテーマに対談を行いました。本記事は前後編の前編となっております。

<後編はこちら>
マーケティングの効果を高める為のデータ活用とは データ基盤構築を推進する重要なポイント(後編)

日本企業のデータ活用の現状とは

― primeNumber社は、データ活用のニーズに応えるために様々な企業の受託開発も担われていると思います。primeNumber社から見たデータ活用の”今”って、企業側の変化としてはどうなっていますか?オーダー内容の変化も含め教えてください。

鈴木:データを活用する環境が整ってきています。(我々が提供するTROCCO※1のような)データを取得するツールも、データを格納するデータウェアハウスも、かなり進化して、安く・ 性能も上がっています。それによって以前よりデータが取り扱いやすくなりました。企業が取り扱うデータの種類も、テキストデータや画像データ等まで、幅広くなっています。また、活用先も、これまではダッシュボードを構築する事が多かったですが、(取得・整備したデータを)システムに戻したり、マーケティングの施策につなげる事も増えてきました。最近ではLLMの利活用※2も含め、使用先の幅も広がってきました。よりデータを扱いやすい環境が出来たことで、企業もデータ活用を積極的に進めていく事へ繋がっているのかなと思います。

※1 TROCCO(トロッコ)…「日本発」の分析基盤向けデータ統合自動化サービス(https://trocco.io/lp/index.html)
※2 LLM…大規模言語モデル(Large language Modelsの略)、膨大なテキストデータから学習し、自然言語処理を行うモデル

 ― どれくらい前と比べ何が変わっていますか?

鈴木:日本でクラウドのデータベースが急速に発展・浸透してきたのはここ5年くらいだと思います。直近だとLLMの発展もすごく早い(笑)最近は特に、急激に動きがある分野です。

― これまでデータは、リテラシーの高い一部の方々が活用を進めてきた印象ですが、ここ5年の変化の中で、オーダーする企業の特徴も変わりましたか?

鈴木:変化、という意味での回答は難しいです。というのも、顧客の事業が変わっている事もありますが、(primeNumber社が)事業を拡大したことで大手企業からお声がかかる事が増えており、我々の企業としての立ち位置が変化したという事があります。そういった前提の上にはなりますが、オーダーの変化としては幅広くなったという印象です。例えば、データを扱いたいという意思を持っているが、具体的にどうしたらいいか分からない、という企業様も未だに少なくありません。一方で、LLMの活用を進めたい、という様な、より高度なオーダーを持つ企業様に向けてご支援させていただく事もあります。

― オーダーの幅広さというのは昔からですか?

岩田:依然として広告周りが多いですが、直近では色々対応しています。エネルギー関連、小売りや人材など…。本当に幅広く対応出来る様になったと思います。先程の鈴木の話と重なりますが、機械学習が2012年あたりから流行り、「データの前処理※3」へのオーダーが急速に増加しました。基盤よりも前処理のニーズが高まっていた所から、(データが蓄積されてきたことで)また基盤へと一巡しており、俗に言うPoC※4を回した状態です。そこから「知見があるんだからちゃんとしたデータ基盤を作りましょう」というアップデートが入ったり、具体的にオーダーしてくれるお客様が増えています。

※3 前処理…学習させるデータを一旦加工すること
※4 PoC…概念実証(Proof of Concept)、新たな概念やアイディアの実現可能性を示す為、施策開発に入る前に行う検証

― デジタルのマーケティング領域でもだいぶ変化がありましたよね。10年前と比較すると共通言語も大きく変わっていますし、お客様のDXへの考え方も変化しています。コロナの影響もあり、システムを活用する事が善とされ受け入れられるようになりましたね。以前まではエクセル以外のアウトプットを嫌がられるお客様が多かったのですが、リアルタイムで状況が把握できるダッシュボードの利便性が受け入れられる様になり、価値観の変化を感じています。 

加藤:そうですね。コロナウィルスが流行した事で人と人とが接しなくなり、離れた場所で業務を回す際、クラウド環境などのシステムを通じることで、遠隔でも業務が回る、物理的なファイルがなくても問題ない等の場面が増えるなど、変化はありますね。先ほど鈴木さんが仰った通り、クラウドの環境変化やとっつきやすさ、導入の費用が軽くなった為、気軽に導入できるようになった企業もあると思います。現在、SaaSのニーズも多いです。マーケティング支援を行う中で、ビジネス用のデータだけではなく、管理部門でも続々とSaaSを取り入れていこうとする企業が出てきています。クラウド上で何かを管理する・データを見える化する事に抵抗感が無くなってきているのではないかと思っています。

マーケティングでデータ活用を取り入れるために必要なことは?

― 先ほど鈴木さんが仰っていた「データを具体的にどう扱ったらいいか分からない」お客様からのニーズが高いデータはどんな種類のデータですか。

鈴木:データとしては多様にあります。弊社が提供する「TROCCO(トロッコ)」も、色々なデータが使える事が強みのひとつでもあるので。マーケティングのデータもあれば、基幹系※5や、MA、SFAなど、幅広くあります。

※5 基幹系…会社の業務内容と直接関わるシステム

― これまでデータ活用と距離が遠かった人たちからの相談も増えていると思います。そういった方からの問い合わせで、特に印象深い相談はありましたか。

岩田:規模の大きいお客様が増えています。また、今回VENECTから受けたオーダー※6では、在庫管理やサブシステム的な領域も含まれていた為、規模がかなり大きかったですね。他には、業務もデータを貯めるところから一緒に考えなくてはならなかったり、どのくらいやるかというような構想段階で大きな時間を要すお話をいただく様になってきていて、どうしようかなと思ったプロジェクト初期は印象深いです。進めていく方向を間違えてしまうと大変そうだなということは所々ありました。

※6 岩田氏はprimeNumber在籍時にオーダーを受け、プロジェクトを推進

― 支援した経験がなく、業務慣習が分からない業界もあると思います。働く人のワークフローがわからない、誰がどの情報を持っているのか紐解く必要があるんだろうなと思いますが、どの様に対応していますか。

岩田:私は 、基本的に一緒に見させていただくという意味で、日々どの様に業務されているか1日のオペレーションを伺います。お話を聞いた上で、どの部分を直さなければならないのか、いくつか要点を絞り、ディスカッションを行います。ディスカッションでは、基本的に問題点について話を膨らませていきます。この部分は時間をしっかり取って進める場合もあります。お客様とのやりとり次第で、私たちの言葉では伴走型の支援と言ったりします。

データ活用を推進していく際の課題と乗り越え方とは

― ひとつの部門の課題を解決するデータ活用と比較し、部門を超えてデータ活用をしていく場合は、同じ課題を共有できない等の壁があると思います。その壁を乗り越えていく事は簡単ではないと思っていますが…乗り越えた事例はありますか?

岩田:解決策と言うには少し異なるかもしれませんが、トップダウンとボトムアップをどう攻めていくか考える事があります。基本的にはトップダウン型の方が多いですが、DXの観点やデータ基盤を作る場合では、先人を切って旗を振ってくださる方もいます。例えば、現行の情報システムの担当者や、デジタル領域の部長の方で、横や関連の組織へ横断的に「いっしょにやりましょう」と声をかけてくれる気概を持った方々です。その波に乗らせていただくといいますか、一緒に進めつつ、方向性が誤っている場合は進め方を提案しつつ、共に壁を乗り越えていきます。このように、ボトムアップ型の場合では、現場の有識者の方を中心に発言を代弁しつつ提案する形で進めています。この2つのスタイルのどちらかですが、やはり前者のトップダウン型の方が多いと思います。

― トップダウン型では指示通りに動くものの、慣れている業務慣習と異なる為、思ったよりも進まない事が出てくると思います。最初は上手く動けなかったが、最終的に成功した事例はありますか?

岩田:ご質問とはずれるかもしれませんが、モックアップがとても大事だと思っています。今回も Looker Studioでモックアップを作らせて頂きましたが、動くものを早く見せる事が効果的だったシーンが多々あります。例えば早く上がってきた制作物を共有した際に、現場の方がご自身で作っているものを見せてくださる事があります。社内で反応してくれる方が出てくると、ニュートラル(無反応)な方からも、評価や好感触なリアクションをいただけるシーンが増えて、施策に対して後押ししてくれるようになります。また、大きな規模で捉えずに、範囲を絞って確実にプロジェクトをやりきることも大事だと思っています。先ほどの話で言うと、在庫やサブシステムなど、繋がりがあるのでひとつずつ解決していく事です。実行する範囲を絞り、その部分のみで費用対効果がどのくらい出るのか。手法などを検討して、モックアップを作成し早くプロジェクトを回していきます。その結果、現時点の効果でも良さそうだから導入していきましょう、となる事もあります。小さいところから始めて広げていく事は私たちの経験でも多いです。

― データ活用を取り入れていく際、他の部門から横槍を入れられない様に、完成するまで関係各所に一切見せない企業も意外と多いと思っています。今のお話を聞いて、所謂、開発に関わっていないけれど使用する方々に早めに少しずつ見せていく事は、データ活用の環境を作る意味でとても大切なんだなと思いました。

鈴木:先ほどの話でもありましたが、大きく作り込みすぎない事が大事です。要件定義が複雑すぎると、プロジェクトの初期からパワーも時間も多く必要となってきます。そこで我々は、小さく切って、小さい範囲から確実に実行していき広げていきましょうという話をよくします。実際に取り組む方に、上手くいったという感覚を持っていただけますし、周りの人たちから「良い事・面白そうな事をやっているな」と思ってもらえると、組織の中から強い引き合いが生まれる事もあります。そうやってデータを整え、リソースを活用し、さらに他の所にもデータ活用が広がっていくといいですよね。

― 一からしっかり作っていかなければならないのか、どこまでマネージしていく必要があるのか、という部分は、データ活用や基盤作成に際し、ハードルの高い部分だと思っています。今の話は色々な企業の方達にとって、とても嬉しい話ですね!

加藤:VENECTでも同じ経験があります(笑) 完成物をドーンと出しても最初は反応が薄く、ただ見ているだけで利活用してくれない人が多いんですが、先ほど仰っていたニュートラルな人、アーリーアダプター※7みたいな人で興味を持ってくれた人から少しずつ引き入れていきます。そういう人たちは反応を声に出してくれる事が多いので、輪が広がっていくんです。私たちの中でも起きている様な事なので、効果的な方法ではないでしょうか。

※7 アーリーアダプター…イノベーター理論のひとつに含まれるマーケティング用語で、商品やサービスを早期に試す顧客を指す

― データ活用を取り入れる為には、動いている人たちが、範囲を絞ったプロジェクトで、ダッシュボードなど動くものを見せながら関係各所を少しずつ巻き込んでいく事が大事、という事ですね。

<後編はこちら>
マーケティングの効果を高める為のデータ活用とは データ基盤構築を推進する重要なポイント(後編)

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