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マーケティングの効果を高める為のデータ活用とは
データ基盤構築を推進する重要なポイント(後編)

この記事でわかること
  • マーケティング活動におけるデータ活用
  • 売り上げを最大化する「データ共通基盤」について
  • データ活用を推進する上での課題と乗り越え方
  • primeNumber社とVENECTの取り組みについて

読了目安:16分

目次

対談の概要

左から前株式会社primeNumberソリューション本部ソリューションアーキテクト、現株式会社Rounda CEO:岩田 匠(以下、岩田)
株式会社primeNumberソリューション本部プロジェクトマネージャー:鈴木 大介(以下、鈴木)
ヴェネクト株式会社テクニカルディレクター:加藤 智司(以下、加藤)

データ活用への関心は高まり続けており、マーケティング活動においても、データを取り入れる企業が急速に増えています。しかし同時に、 活かしきれていない、利活用していきたいと思っているが方法が分からない、などの悩みも増えています。

今回は「あらゆるデータを、ビジネスの力に変える」をビジョンに掲げる株式会社primeNumberからプロジェクトマネージャーの鈴木氏と、primeNumberから独立し株式会社Roundaを立ち上げた岩田氏 をお招きし、VENECTのテクニカルディレクターの加藤を交え、マーケティングにおけるデータの利活用とは何か、またどう活用すべきなのか、現状の日本企業が抱える課題から、実際にクライアントへ提案している解決方法についてをテーマに対談を行いました。本記事は前後編の後編となっております。

<前編はこちら>
マーケティングの効果を高める為のデータ活用とは データ基盤構築を推進する重要なポイント(前編)

マーケティングにおけるデータ活用とは

― 今回VENECTが、岩田さん、鈴木さんと行ったプロジェクトについて、発端から聞かせてください。

加藤:VENECTでは、メーカやブランドが商品を作り、消費者の手に渡るまでの間と、リピートし続けてもらう一連の仕組みを作ることをマーケティング活動と定義しています。製造から消費者の手に渡るまでの間には、製造部、在庫管理部、販売部、マーケティング部と様々な部署が関わると思います。各部門はそれぞれデータを持っているものの、他部門のデータをみれていない状況が大変多いです。マーケティング支援を行う中で、その状況がもったいないと思う事が多々ありました。

ばらばらに管理されているデータを統合し、全員が同じデータを見れる状況にする事で、マーケティング活動としては売り上げの最大化に繋がり、企業としては費用対効果が高まると考えました。また、一方で一般消費者に対しては、欲しいものを欲しいと思った時に購入できる状況を作る事が重要だと思います。その為に今回VENECTは、primeNumber社と共に、集客・売上・在庫の3つのデータを連動させて「データ共通基盤」を作りました。

※ 岩田氏もprimeNumber社在籍時にオーダーを受け、プロジェクトを推進

― このプロジェクトについて、一番最初にVENECTから「マーケティングのデータ活用をしたい」という相談を受けた時、どう思いましたか?

岩田:そうですね!シンプルに「面白そうだな」と思いました。いろんな部門を跨いでいく事って正直難しいことじゃないですか。primeNumber社はそういった難しい事が基本的に好きな社員が多いと思っています(笑)ただパッケージが色々ある為、活用する事で一部のデータ連動は可能でしたが、反対に一から作る必要があるのかという疑問もありました。そのため、今回は在庫などのオフラインの領域も対応しつつ、基本的にデジタルのデータを集める、かつお金を掛けず素早くやっていくことに集中しました。取り組みの中で、本当に必要とするお客様に対し、価値を提供していきたいという加藤さんの思いが感じられたこともあったからです。そしてお話を聞いていく中で、大きい話から進んでいくのではなく、先ほどの話でもあった通り、ステップを切って小さい範囲からやっていく事だったり、きちんと具体の内容が見えていたりした部分から、一緒に取り組みができそうだなと思ったのが、最初の頃の話です。

加藤:構想を書いている時、正直不安でした。(笑)当時は、データでこういう事が叶えられたら良いよね、という考えまでしか書けなかったので、要求定義と呼べるか怪しい、構想が思想みたいになっていました。構想を要件にまとめてくれるところからお手伝いしてくれる会社さんがいるか不安だったので、こちらの意図をお二人に汲み取って頂けて良かったです。

皆さんはいつも熱量を持って色々お話を聞いてくださいます。一番御社から言われて印象的だったのは「このデータを取り扱う人のワークフローやユースケースを教えてください」という質問でした。この質問は今でもよくいただきます。このデータで何の判断をしたいのか、その後連携する部門の人たちにはどういう情報を渡せるようにしたいのか、という所まで、一緒にお客様とのMTGに参加していたと錯覚するくらい、解像度を高めようとしてくれます。他にも、システムを作って終わりではなく、使用する人のことを考えて一緒に要件定義を詰めてくれた事がとても有難い部分でした。

抽象度の高い要求定義の内容を具体化するには?

 ― 要件定義のフェーズについてもう少しお話を聞けたらと思います。抽象度の高い要求定義の内容を具体化(要件定義)する際の進め方について教えてください。

加藤:先ほど話した通り、構想は持っている状態から始まりました。具体的には、まず、マーケティング施策を実施して集客してきたお客様がどれだけ購入に繋がったのかを可視化できる状態を作りたかった事。加えて、購入の先にある在庫の状況も不透明であることが多いため、このまま集客を続けて購入数が増えても在庫切れは起きないのか、という部分まで可視化できるようにしたいという事です。
ですので、一番最初にご相談した事は「集客・実売・在庫のデータを連携させ、可視化と予測をすることで、在庫切れが起こるから広告のプロモーションを停止させた方がよいのか・予測上在庫が潤沢だからプロモーションをより加速させた方が良いのかを判断できるようなデータ基盤を作りたい」という事でした。

このような構想や要求定義を、より具体的な要件定義に落とし込んでいく為に、「予測」という言葉の定義について分解していくことから始めました。ひとえに「予測」と言っても、どのくらいの売上がいつ上がるのかの”売上予測”、在庫がいつ頃なくなりそうなのかの”終売予測”などいくつもの意味があります。何の予測なのか(定義)と必要なデータは何か、実現難易度はどのくらいかを5段階のレベルに分けました。その中でも今回のプロジェクトで構築できるのは「レベル2〜3までだよね」と認識を合わせ、本番開発の要件およびスコープとして決定しました。スコープ決定後は、どのようにデータ処理を実装するのか、どのようにツールやアーキテクチャを選定するのかを要件定義フェーズで実施しました。

どちらかというと、前半の予測について考えることなど、両社の知識レベルや認識の違いを共通認識として持つことに時間を掛けましたね。同じ考えのもと、何をどう叶えたいのか、どのように作ったら良いのかを2〜3ヶ月お付き合いいただきながら、すり合わせつつ作っていきました。

岩田:正直に話すとこの部分は難しい所もあったなと思っています。私は現実的に実現が可能かどうかについて話をしがちですので、今回の話し合いでも技術的な観点から出来る範囲について話をする事が多かったです。お客様の中には、一旦持ち帰っていただいた後に受け入れられなかったりと、途中でプロジェクトが頓挫してしまう事もあります。加藤さんは、持ち帰っていただいた後、次週にはどう決まりそうか遂次報告してくださった印象があり、次どう動いていくのか相談できたので、スムーズに順を踏んでのお話ができたと思います。

加藤:難しい部分ですよね。私は技術者なので、今回の話でも、揃えられるデータからどこまで出来るのか、と言うことがわかりますが、期待値が高くここまで叶えたいという要望に対して答えられないとプロジェクトが一旦止まってしまう可能性があります。ここをいかに突破できるかが肝ですよね。

岩田:「データがあるなら出来るんじゃない?」と言われることはあると思います。確かに、データがあればそれを基にモデルを作る等、できる事はありますが、実際は、色々な所からとってきたデータを同じIDに揃えなければ使用できなかったり、保管場所を精緻化しなければならなかったりと、手順を踏んで対応していく必要があります。「予測をしたい」というのはシンプルな目標ですが、そういった工程が抜けている中で伝え方を誤ってしまったり、お客様の業務について知識が乏しい状態でお話をしていくと、なかなかうまくいかないという事もあります。

加藤:知識や認識が異なるから、お互い難しいですよね。

システム改革について

 ― 次に、今回システムをどう改革していったのか聞かせてください。

加藤:まず、アーキテクチャをどうするかという部分から決めました。例えばDWHはGoogle BigQuery、BIはTableauやLooker Studioなど。今現在VENECTで作成している広告の取り込みデータを可能な限り流用する形で進めました。

 ― ECサイトにあるデータのみどこから取得するかという部分がありますが、そこに対する進め方はどう決めていきましたか?

岩田:そうですね。今回進めていく中では、速度感が重要だったのかなと思っています。サービスのローンチ前に開発をしており、ローンチする前に見える形まで持っていきたいという考えがあった為、アーキテクチャの選択の際は、基本的に親和性が高そうなサービスや、将来を見据えて色々な事ができるTableauを選ぶか、というお話をさせていただきました。早く作れる、かつ実際にどのくらい利用してもらえるかが分からないので、出来るだけコストを抑える必要も出てくると考えると、自然とGoogle BigQueryやLooker Studioを使うことになりました。将来的なことをどこまで考えるかという部分は迷ったところです。

加藤:各種ツールやアーキテクチャの選定をする際、それぞれが持つ一般的なメリット・デメリットを考慮して選んだ、というよりは、今の状況やQCDの観点で優先すべき速度とコストを考えた事で、自然と決まりました。

 ― 商品のパイプラインの設計やデータの処理の設計をする上で困ったことはありましたか?広告のデータを読みとく部分は困った所ではないかと思っていますが…。

鈴木:広告のデータもECのデータもですが、どのようなデータなのかを遡りながら見ていく部分に一番時間を掛けました。ECのShopifyの場合では、実際に開発サイトを使って、自分で注文をしたりと試しながらデータがどう連動するのかをチェックしました。他には、テスト注文やサンプルの在庫をどうデータとして扱うか、(ローンチ前のブランドを対象にしていた為)業務フローが決まっていない状態でデータを取ることを考えると、運用としてこういう事をやって頂きたい、という様なお話をしました。運用含めて作っていくところは、面白いと感じる反面苦労した所です。

加藤:業務フローを決めながら、サイト制作も行っていました。ブランドとしてどう売り出していくのかという準備と並行してデータ共通基盤を作っていたので、決まっていない部分もかなりありました。色々な想定をしながら、データで解決するのか、業務フローのオペレーションの方で対処するのかといった事もかなりディスカッションしましたね。他には、 弊社で既に構築していた広告データのデータ基盤とダッシュボードについて、仕様やデータ構造を共有しながら、primeNumberさんの疑問点に答えていく形でお取り組みさせて頂きました。

鈴木:(新規で取り込む)データ自体と業務フローの2つを、きちんと理解しながら進めていく事、既存で作っていらっしゃった基盤とダッシュボードを上手く接合させて作っていく必要がある事、最初は私も上手く掴めていなくて、どう組み合わせていくか悩みました(笑)

加藤:この部分は既存のものを流用する、反対にこの部分は一度切り捨て新たに構築し直す、といった部分は確かに悩みますよね…。開発フェーズの話になりますが、ダミーデータを作る部分は大変でした。先ほど話した通りブランドとしてローンチをする前だった為、基盤をテストする際は、「実際のデータを想定したダミーデータ」を使用しました。目標値を基準に前後数十%ほど上振れ下振れするデータを準備し、ダッシュボードの見え方などを確認しました。実際の操作を想定しながら、ダミーデータでリアルな数値にどこまで近づけられるかを何度も繰り返し検証したことは、私が苦労した部分です。

鈴木:実際のデータが綺麗に無い状態で、使用されるものをイメージしながら作っていったので、どんな使い方をするかという話はたくさんディスカッションしながら進めた記憶があります。

プロジェクトを振り返って

 ― プロジェクトを通じてお互いの会社へ抱いた感想を教えてください。

鈴木:まず、データの観点で言うと、とにかくすごく進んでいるなという感覚です。既存の基盤やダッシュボードを見せて頂いた時に、ここまでしっかり作っているんだと思いました。やはりデータを大事にしながら、クライアント様に価値提供をしていこうという姿勢が強くあるなと感じました。それでも、広告と売上のデータは勝手が違うので、我々に頼って頂けた、一緒にやっていけたというのがあります。ここまでデータを整えていらっしゃるので、コミュニケーションもしやすいと思いました。データも、リアルでも、できるできないのポイントについて率直に話しても問題無く、きちんと理解して、お互いに協力しながら出来る範囲を探っていける部分は我々としてやりやすかったです。

加藤:primeNumber社と言えば「TROCCO(トロッコ)」が有名だと思っているんですが、私はデータエンジニアリングソリューションのサービスから知り、その後TROCCOを作っている会社ということに気がつきました。(笑)「あらゆるデータを、ビジネスの力に変える」というビジョンを体現するために、データの整理整備にとどまらず、様々な取り組みをしていらっしゃいます。TROCCOやソリューションサービスから始まり、現在ではデータカタログのプロダクトをリリースしています。今鈴木さんたちの部門では、データ基盤を作っていますが、データの利活用に関する総合的な支援や、作るだけではなく、作った後の運用や、データリテラシーの向上など、使う人への支援まで、総合的に幅や領域を広げている会社だと感じています。今回私たちが依頼した事は、ファーストステップの「データ基盤を作る」という部分です。その先のみんなで使っていく、クライアントへ提案していく場面では、絶対に「このデータって本当に正しいデータなんだっけ?」というような定義認定の問題が出てきます。他にも、どこから集めたデータかといったガバナンスの問題や、各々が同じデータを違う手順で取得する為、本物のデータが分からなくなる問題が出てくる事も。そういった部分に対しても、プロダクトやソリューションサービス等の支援を行っているので、総合的に頼れる企業だと感じました。

最後に

 ― データをどう活用して欲しいか、読者へメッセージをお願い致します。

鈴木:データは、上手く使えば高い価値を生み出す事が出来るものだと思いますが、独特の難しさがあります。データの領域に知見を持っている人は、今も企業の中では多くなかったり、あったとしても組織的に動かしにくい事があると思っています。我々は、そういった状況に対し、プロダクトやソリューションサービスはもちろん、データを整理するところから運用・活用まで、全体をよりサポートできるよう、今まさに領域を広げているところです。ビジョンでもある「あらゆるデータを、ビジネスの力に変える」を基に、データ活用の活動を広げていければなと思っています。

加藤:先ほどもお話しした通り、マーケティングはモノが生み出されて消費者の手に渡るまで、様々な工程や部門の方が関わっていきます。その中で、各部門がデータをバラバラに見ている状況や、他の部門に共有されないが故に、投資対効果や売り上げの最大化が叶わないことは、ビジネス成長になかなか繋がりにくい部分でとても勿体無いと思います。全員が同じデータを見ながら、自社のビジネス成長にどう取り組むか考えられる様ご活用頂いたり、データを使える環境・見える、読み取れる環境を作って行って頂けるとより良いと思っています。その考えを体現するためのデータ活用基盤を今回の取り組みで作らせて頂いたので、読者の皆様にも是非共感して取り組んでいただけると良いなと思っています。

 ― 本日はありがとうございました。

今回は「あらゆるデータを、ビジネスの力に変える」を掲げる株式会社primeNumberから鈴木氏を、株式会社Roundaから岩田氏をお招きし、VENECTの加藤と共に、マーケティングにおけるデータ活用の重要性や、導入する際のポイント、実際にデータ共通基盤の開発に取り組んだ際のお話を、事例なども合わせて聞かせていただきました。この度の対談記事が、データ活用の推進やマーケティング活動の一助になれば幸いです。さらにお話を聞きたいと言う方は、各社のお問い合わせフォームより問い合わせください。

各社へのお問い合わせはこちら

株式会社primeNumber
データエンジニアリングソリューションサービス 問い合わせフォーム:https://dataorchestration.cloud/solution/contact

株式会社Rounda
問い合わせフォーム:https://form.run/@rounda-contact

ヴェネクト株式会社
問い合わせフォーム:
https://www.venect.jp/contact/

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